基礎研究

移植腎の生着率改善のための新規診断法の開発

  • 1)MRI技術を応用した、摘出腎臓グラフトの非破壊的評価系の確立
    MRIの撮影方法の中で、酸素化ヘモグロビン量を計測する、BOLD MRI法及び、組織内浮腫を計測する拡散MRIの手法を用いて、ラット心停止後の摘出腎臓グラフトの組織障害を非破壊的に評価する方法を開発しました(Kaimori J-Y et al. Plos One2013)。この方法の開発により、現在、世界的に不足の叫ばれている移植腎臓の拡大及び、移植腎臓の非破壊的な予後予測の可能性が期待されます。本研究は、平成24年度日本臓器保存生物医学会研究奨励賞に選定されました。また、平成25年7月25日毎日新聞全国欄に掲載されました。
  • 2)多光子顕微鏡とGFP全身発現LEWラットをレシピエントに用いた、移植腎臓のlive imaging法の確立
    臓器移植分野で、拒絶反応はとても大きな問題のひとつです。私たちは、実際に生体内で起こっている拒絶反応を、生体が生きている状態で観察したいと考えました。そこで、GFP全身発現LEWラットをレシピエントに、DAラットをドナーに用いて、GFP発現した血球細胞の移植後急性拒絶反応を、多光子顕微鏡を用いて観察出来る系の確立を行いました。本実験系において、移植後急性拒絶反応を生態が生きたまま腎臓組織内を観察することが可能となり、強制拒絶後の微小循環の変化、血球細胞の尿細管浸潤等の現象が観察可能となりました(論文準備中)。本研究は、 CPCFリサーチグラント2011,貝森淳哉,Ciclosporin Pharmaco-Clinical Forum,2010年07月を受賞しました。

移植臓器の働きを助ける方法の探索

  • 臓器肥大に関わるepigeneticな因子の探索及び解明
    生体内に二つの腎臓があり、二つで体の中の恒常性を保つ働きをしています。腎移植では腎臓をひとつだけ、腎不全患者に移植することになりますが、移植された腎臓は肥大して、二つ分の役割をしようとします。私たちはこの臓器肥大のメカニズムを解明し、腎移植した後の腎臓の働きを拡大させることは出来ないだろうかと考えました。そこで、マウス生後2週間後の腎臓肥大期における、histone修飾の変化を、それらを認識する28種類の抗体を用いて網羅的に解析しました。マウス生後2週間後の腎臓肥大期に変化するhistone修飾として新たに、H4K20acを見出しました。この修飾は、今まで報告されているものとは異なり、アセチル化にも関わらず、発現量の少ない遺伝子のpromoter領域に分布している事が確認されました。また、その他の臓器肥大でも発現増強が確認されてまったく新しい臓器肥大マーカーとして注目されます(Kaimori J-Y 論文提出)。本研究は、 第4回腎疾患と高血圧研究会研究賞及びCPCF(Ciclosporin Pharmaco-Clinical Forum)リサーチグラント2013を受賞しました。

移植臓器の拒絶反応について、新規診断法の開発

  • 移植臓器での拒絶と寛容を高感度かつ特異的に識別するバイオマーカー遺伝子群の同定
    マウスの心移植免疫寛容モデル・肝移植免疫寛容モデル・心移植拒絶反応モデルを用いて、免疫を制御する遺伝子群の発現を、マルチプレックスでの遺伝子発現定量解析システムにて検討しました。この免疫寛容あるいは拒絶反応を反映する遺伝子群の発現は、それぞれ免疫寛容あるいは拒絶反応を示す病理組織標本結果や生化学検査結果と相関していました。これらのバイオマーカー遺伝子群の測定が、拒絶反応と免疫寛容の診断に有用である可能性が示唆されました。(Xie L, Ichimaru N, et al. Liver Transpl 2012,国立成育医療研究センターとの共同研究)

臨床研究

腎移植後癌発生率を低減させる因子の同定

  • 腎移植には、患者は免疫抑制剤を服用しなくてはなりません。免疫抑制剤には、腫瘍免疫も抑える効果があり、軽度ですが腎移植患者には発癌のリスクが高くなることが知られています。そのため、腎移植患者の発癌率を低下させる方法が求められていました。そこで私たちは、様々な生理活性をもつ、活性型ビタミンDに着目して、腎移植後活性型ビタミンD投与した群と投与してない群で癌発生率を比較しました。 2007年9月から2010年11月の観察期間において218人の腎移植後患者を追跡したところ、活性型ビタミンDを内服している患者で、内服していない患者に比べて有意に癌発生率が低いことがわかりました。これらの事から、腎移植後の患者において、活性型ビタミンDがchmopreventive agentとして使用できる可能性があります(Obi Y, Ichimaru N, et al. Cancer Prev Res 2012). 

腎移植後再発腎炎に関する研究

  • 1)IgA腎症再発後の扁桃摘除術が腎メサンギウムのIgA沈着を改善し、移植腎予後を改善することを解明
    腎移植患者さんの原疾患の1つである慢性糸球体腎炎の中でIgA腎症は最も頻度が高く、腎移植後の再発が問題となっています。腎移植患者さんのIgA腎症再発においても、通常のIgA腎症の患者さんと同様に、扁桃摘除術が病理学的および臨床的に有用であることを報告しました。(Wang Y, Ichimaru N, et al. Transplant Proc 2014)我々は泌尿器科医と腎臓内科医が共同して腎移植患者さんの診療にあたっており、腎移植後の腎臓病再発時などには相談しながら治療方針を決定しています。
  • 2)移植腎病理標本における潜在的IgA沈着の意義を解明
    腎移植後のIgA腎症再発は重要な問題です。腎移植後10年以降の患者さんの場合、3人に1人に検尿異常を認めない潜在的IgA沈着が認められます。しかし長期生着腎移植患者さんの場合は、潜在的IgA沈着は病理学的にも臨床的にも腎臓病の進行と相関しないことを解明しました。(Hara S, Ichimaru N, et al. Transplant Proc 2014, 神戸大学との共同研究) 腎移植患者さんの移植腎病理組織検査では、拒絶反応や再発腎炎および免疫抑制薬の副作用や種々のウイルス感染症の所見が混ざり合っており、判断に迷うケースがあります。我々は移植腎病理を専門とする病理医とも共同で、移植腎病理組織検査結果の解釈や治療方針の決定を行っています。

共同研究機関

  • 大阪大学医学系研究科器官制御外科学(泌尿器科学)(野々村祝夫)
  • 老年腎臓内科学(楽木宏実、猪阪善隆)
  • 統合腎疾患治療学(椿原美治)
  • 大阪大学生命機能研究科(木村宏)
  • 自治医科大学(小林英司)


このページの先頭へ